2017/01/15.Sun

モンちゃん (四谷シモン?銅版画)

モンちゃんは、知り合いの骨董屋さんの床に無造作に置かれていた。

IMG_1825.jpg

目力に圧されて、拾い上げると「Y.Simon」のサイン。
思い当たるといえば、人形作家の四谷シモンであるが、
澁澤龍彦を通じてその名前に辿り着いたような具合であったので、
そのときは銅版画もしていたかどうかは分からず、
留守番をしていた奥様も何もわからないということであった。
骨董屋さんの品物に埋もれて場違い感満載のモンちゃんであったが、
後ろ髪を引かれる様な気がして、連れ帰ることにした。
(あとでご主人に聞いてみると、仕入れたばかりで
調べようと思って置いていたところ、私がかっさらってしまったらしい。)

IMG_1827.jpg

作家は四谷シモンである、ということにして考えると、モンちゃんはお人形だ。
(氏にあやかって、モンちゃんと呼んでいる。)
しかも生首である!?いや、胴体を描いてないだけか。。
・・・見方によっては結構コワい。

IMG_1828.jpg

三毛庵思うに、ぬいぐるみというのは生き物らしく作られてもいないが、
動物の可愛いところが凝縮されていて、血の通った可愛らしさがある。
一方で、お人形というのはなかなか人間という生き物をよく写しているものだが、
それだけに、凍りついた屍体に近しいような、生々しさがある。
(屍体に生々しいという表現もヘンだが、そういう奇妙な存在感がある気がする。)
澁澤龍彦の部屋の写真にも、そういう四谷シモンのお人形があった。

お人形を描いたと思しきモンちゃんは、間近で見るとそのような
生きてはいないものの匂いがする。

でも、モンちゃんは不思議なのである。
部屋に置いてぼーっと遠目に眺めていると、とても人間っぽい。
やんちゃな生娘が顔を覗かせているようだ。
そして、骨董屋さんで異彩を放っていたモンちゃんは、
三毛庵宅のお部屋では、結構居心地良さげにしているのだから
やっぱり不思議なのである。

※額の裏に所載の本がある旨が書いてありました。
 モンちゃんが載っている本をご存知の方がいらっしゃいましたら、
 教えていただけると幸いです♪

IMG_1838.jpg
今朝方、西方の十六夜の月。まだ時折舞う雪に霞む。

IMG_1839.jpg
昨日宵の口、薄っすら雪が積もった。今朝方撮影。
(昨年凍らしかけたマユハケオモトは慌てて取り込んだ。)

(備忘録:澁澤龍彦の想ひ出↓)
若いころの三毛庵は本が好きだった。
(今も大好きだが、読書をしないこと幾久しく、あまりそのようには言えない。)
高校時代はしかめっ面して独逸文学を読み耽り、
そのあとは仏蘭西文学を読み飛ばした。(当然日本語訳である。。)
そのような中で澁澤龍彦を知ったのであろう、
せっせと読んでいた時期があった気がする、でも忘れて了った。
そうそうハードカバーは買えなかったので、
氏の作品はほとんど文庫でしか買っておらず、それらも昨年処分している。

モンちゃんがきてふと思い出し、唯一ハードカバーを買っていた、
「フローラ逍遥」を書棚から取り出す。
氏が亡くなる直前の、泣きたくなるほど美しい本である。
取り出して、あぁ若いころに買えた美しい「もの」が本だったのだなぁ、
と思い至る。(とはいえ、この本はなかなかの高級品であった。)
そっと開くと本の感触が伝わってきて、かたちがある「もの」っていいなと思う。
だってもう、澁澤龍彦はこの世にはいないのだから。

私の大好きな日本水仙の図、「水仙」の章から始まる。
それから椿、梅と続く・・・大好物のオンパレードである。

ふと、彼は梅のことをどんな風に書いていたのだったろう、と読み始める。
日本を含む東洋では珍重されてきた梅が、ヨーロッパでは人気のないことについて、
「凛としたところがありすぎる」とあり、それを「ミニマムの美学」と書いているのでぎょっとした。
先に三毛庵、椿の有楽の美しさについてどう書けばよいのかと考えた末、
辿り着いた言葉が「ミニマムに華やか」というものだったからだ。

「ミニマム」というのは、確かに日本人の美学である。
だから彼が書いていたことを忘れて了い、三毛庵がなぞったとて不思議はない。
だけれども、モンちゃんを眺めて彼を思い出し、
忘れたはずの彼の言葉に再び巡り合う、そういうことにはっとするのである。
こんなとき、世界はやっぱり驚きに満ちている、そう実感する。

久しぶりに読んだ彼の文章は平易で美しく、時折この本を開くのを
この冬の愉しみにしようと思う。

IMG_1835.jpg

IMG_1836.jpg

(澁澤様、四谷様、写真がヘタレですみません。。)
関連記事
スポンサーサイト
 ◆にほんブログ村に参加しています!お気に召しましたらポチッとお願いします♪
 にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ にほんブログ村 美術ブログ 絵画へ    
絵のこと | Comments(0)
Comment

管理者のみに表示