2011/03/31.Thu

紙にのせて(パウル・クレー展&要樹平展)

blog 6902

3月27日(日)、京都国立近代美術館に「パウル・クレー おわらないアトリエ」を
観に行ってきました。
クレーは学生時代から好きで、時々ある展覧会を見たりもしていましたが、
近頃局所的に日本の近代美術にはまっている私は、今回は少し離れた位置から眺める気分。

まだ桜には早い京都でしたが、美術館は朝からなかなかの人出でした。
「絵画」だけでなく、例えば「詩」とか「音楽」とか、純粋な芸術の一滴が
夜の底でそっと結晶化したかのような、密やかな響の画面にはやはり魅せられます。
そういうミニマムで純度の高いところがきっと日本人の心情に添うんだろうな・・・

この展覧会は「どのようにクレーの作品が作られたか」という観点で構成されていて、
クレーのあの独特な、素描のような線描に着彩された作品が「油彩転写」といって、
生乾きの黒い油彩の上に紙を置いて、素描をなぞって作られることなど説明がありました。
それから作品を切り貼りして別の構成にしたり、という技法毎に展示したりしていました。
淡彩の絵を切り貼りしている作品を見ていると、こういう『紙』の素材感も
日本人には好まれる要素かな、とふと思いました。(いや、単に私の好みか・笑。)

さて、いつも楽しみに覗く常設展も愉しんでから(ここでも日本画の下絵の「切り貼り」が
クローズアップ!!)、向ったのは神宮道の「星野画廊」さん。
実はこちらで4/10まで開かれている「要(かなめ)樹平」展が真のお目当てで!
1年ほど前、この日本画家の小品(猫です♪)を手に入れたとき、いくつかの作品の
載った冊子をいただき、「他の作品も色々見てみたいです」とは言ってたんです。
どきどきしながら行ってみると「いつか遺作展をするつもりだったんだけど、
そうだ、そこで『クレー展』やるんならそれにぶつけてやろか、って思ったんよ」とのこと。
日本画家にしてクレーなどの影響を受けたとされる要樹平だそうですが、
何がどれほど違うのか、というところをじっくり見て欲しい、という趣旨のようです。

さて、ここでも待っていたのは『紙』にのせて運ばれてくる絵画の魅力。
でもやっぱり、クレーと樹平の印象は似ているようで全く似ていないものでした。
クレーは戦争と病のうちに亡くなり、樹平は戦争を潜り抜け、戦後を生きた、
そういうだけではないような。
クレーのストイックな、用心深く選び抜かれた美しい旋律と、
樹平の自由に、即興で弾かれた(決してそんなことはないのですが)様な愉しい旋律、
樹平は東洋の文人画家の精神で絵や書を描いていたということですが、その違いでしょうか。
(そういう絵の中で画家も見る者も遊ぶ心境の楽しさが、私が最近クレーなどより
日本の絵に関心がいっている所以かもしれません。)
見ているこちらがだんだん愉しくなる樹平の絵、沢山見れてHappyでした。
(でも愉しくなりながら、ふっと何か生きることの深遠を垣間見た気がしたり・・・)
画廊のご主人が仰っていたけれど、樹平は過去の自分の成功に留まらず、絶えず
挑戦する画家だったと・・・。
画家の個性はそれが「慣れる」に従って、単なるテクニックに堕する危険と絶えず隣り合わせ。
こころある画家は、それを恐れて過去の成功に留まらないのだと思います。
(たしか洲之内徹もそのようなことを書いていたような・・・)
樹平にはそういう自分に対する厳しさがあったのでしょうけど、それを見る側に
みじんも感じさせずに愉しくさせてくれるのが、稀有なことのように思うのです。
何ものからも自由になろうという不断の努力で自由の境地にたどり着く、
仙人とよばれる存在は果たしてそういう存在なのでしょうか。

樹平について、心を動かされたことを、嘘偽りなく書いてみようと思ったけれど、
それはやっぱり難しいことですね。
星野画廊さんはいつも自前で立派な図録を作られていて、私のたどたどしい感想を
読むよりも、この図録が全て語っています。
いつもの奥様の前書きは、それぞれの画家の世界に入り込んで旅をするようで、
ご主人の後書きは、まだまだ絵のことを探索中の私には深い指針となることばかりの
ものです。
要樹平も奥様との二人三脚であったそうですが、道を一緒に歩く人がいて
大きなことを成し遂げる人たちがいる、そう思えるのは何か心が強くなります。

さて、夕刊にクレー展のことが載っていて、クレーの「切り貼り」について
加藤義夫氏がこのように書いていました。
「作品は、切断された断片の上下を反転させたり、左右を入れ替えたりして、
新たに台紙に再構成される。作品の完成が画家の予定調和に終わることなく、
切断・分割・再構成したことによって、予想を超える新鮮な画面構成を
手に入れることができたのだ。・・・」(朝日新聞3/31夕刊)
クレーもやっぱり「慣れ」ようとしない、こころある画家として挑戦をし続けたのですね。
でも「自由」へのアプローチの仕方に西洋と東洋の文化という背景を思ったりします。

樹平についてはもう少しなんとか言ってみたいけれど、今日はこの辺で。。。

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